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2006.03.05

ソフトバンク × ボーダフォンの問題整理

R30氏も整理的なエントリをされているが、少しまた違った視点で整理を。当たる当たらない、次はどうなるという推測予想的なものではなく、どういう問題の整理をすればすっきりするかというフレームの部分を。同じく、必要があれば随時追記していきたい。リンク先参照も合わせてR30氏には多謝。

◆通信サービスとしての視点
これは最も多く語られるだろうことと、個人的にも専門外なので深くは追わない方針で。

・R30「SBが引き金を引く、携帯電話業界の「大殺界」
まずご本人。無難。ポータビリティやら次世代からロードマップやある程度コントロールが効いた条件の中で戦略立案を主にしていただろう立場からすると、視野の端にはあったけれども、出来れば真面目に考えたくなかったシナリオがリアリティを増す。

ドコモ、auもこれをやられたらもう逃げようがない。自社のもつネットワークのインフラが「収益基盤」から毎月莫大な赤字を垂れ流す「過剰債務」にある日突然変化するのを、指をくわえて眺めているしかない。
現実に実行するかどうかは分からないが、過去にBBでもモデムを無料配布したりと、やるときはやってしまう実績があるのは事実。考えたくなくても考えざるを得ないというのだけでも競合には嫌な話です。

・ケータイAlternativeの三田さん「本当に大きな変化は起こるのか?ボーダフォン買収
こちらは、現実的な制約条件とか考えると急にドタバタはないんじゃないの?という落ち着いたもの。

買収はカネさえ積めば短期間で終わるでしょうが、端末も網もサービスも、一夜で出来上がるわけではないでしょう。auやドコモですら、新コンセプト端末開発の期間は短縮傾向とはいえ、企画から発売までに最低1年は要しています。ましてやバックボーンのFMC化や新サービスの企画開発となればなおさらです。
この辺は水面下でどのような調整が付けられているかでしょう。個人的には、インフラ部分から勝負をかけてくることは無いと読んでいるという前提の違いを別にするとしっくり来ます。

・お仕事日誌&一日一麺「ソフトバンクのボーダフォン買収で、Vodafone Live! が Yahoo! Live! に!?
無線系に詳しい某氏のBlog。モバイル系ではなく、無線系というところがポイント。コスト面についての指摘が幾つか。べき論ではなく、足元のエコノミクスの整理から入るのは書き方として個人的に好みです(という自分はもうちょっと別のベクトルを抜き出すスタイルを普段とっていますが)。そして、メーカーへの影響は次の項で。

◆端末メーカーへの影響

同じく、上記の一日一麺から。

端末メーカーのラインアップが変わるような気がします。なんだかんだで携帯通信事業者が大変なのは顧客獲得費用で、インパクトを与えるのが端末の仕入費用と販売費用の差額。ソフトバンクがドコモ同様にプレミアムな路線をとると思えないので、バリュープライス路線を進むのは想像しやすいわけですが、バリュープライス路線に進むには顧客獲得費用の抑制は避けて通れない道かなと。それに加えてイメージを変えるためにも、端末メーカーが変わるんじゃないかなという気がします。
端末については、三田さんのBlogにも詳しいです。というか、こちらの方が詳しいですね。いずれにしても高機能端末とプレミア路線をひた走っていた方向の梯子を外す契機の可能性はあります。

◆ソフトバンクのグループ戦略への影響

そろそろ、この辺から読みとしては面白いところとなります。ボーダフォンは携帯だから携帯業界のことを考えなきゃいけないという前提を暗黙に置く必要は無い訳で、ソフトバンクの持っている戦略オプションは結構あります。そして、話はだんだん既存のAPRUから思考の範囲が外れていきます。

・タカヒロさん「携帯キャリアとしてのソフトバンクの登場。
まずアセットの整理から。

【 ブロードバンドインフラ 】 Yahoo!BB(ソフトバンクBB+Yahoo!)
【 固定通信 】 日本テレコム
【 インターネットポータル 】 Yahoo!
【 ブロードバンドTV 】 BBTV
【 コンテンツ 】 ブロードメディアスタジオ 他
通信領域でもBBと日本テレコム。そして、キャリアがあまり視野に入れない収益源である広告とコンテンツとして、BBTVとYahoo!があります。グループ全体で見た場合、全体が目減りすること無くバランスが取れればいいという見方もある訳で、採算さえ合えばボーダフォンの持っている資産の多くをマーケティング費用と看做すことも出来ます。Yahoo!とテレビが突っ走れるのならそれで十分という非常に桁の大きいどんぶり勘定ですね。

また、もう一つは上記とは別のサービス収入という道もあり日本テレコムがB2Bサービスをこっそり強化しているように(背景についてはCNETでの分析も合わせてどうぞ)、B2Bロングテールとも一部で呼ばれ始めている中小ビジネス向けサービスも視野に入れて動きを見せることも可能です。こちらは、

・南方司氏(楠さん)「Yahoo!×Vodafone新戦略を妄想してみる
にて視野を広めにまとめられています。該当するところを抜くと、
 課金の一元化・電子マネーへの対応
 法人向け端末の充実
というあたり、さらっと触れられていますが、多方面からの決済を押さえるとこれはこれで嫌な気になるプレイヤーが携帯業界以外にもいらっしゃるはずです。

あと、さらっと
 自動車メーカー・カーナビベンダとの協業
という話もありますね。この話が深められることはないかもですが、今後無線系技術が伸びていくことを考えると5年10年スパンで効果を有無かもしれません。

実際、戦略構築方針が全然違うだろうことがボードフォングループ本体へのコンテンツ提供という形でも顕れています。

ここまでを一旦まとめると、このディールはYahoo!JapanのGoogle化という印象で捉えられます(この話はまたいずれ)。

◆無線系との統合
SBグループ戦略のサブセットと捉えてもいいのですが、今後緩やかに音声通信とデータ通信の融合が行われ、インフラとして無線系技術(Wi-FiからWimaxからその先から)も候補となっていきます。基地局やチップ開発、端末の問題など早期に実現するものではないですが、3G4Gというフレームが相対的に弱くなっていくシナリオもありえます。そうなると、段々とTIやインテルなどといった遠かったはずのプレイヤーも間近に。

◆資本市場への影響

R30氏本人とも少しやり取りをしたのだが、ソフトバンク本体のファイナンス云々ではなく、携帯関連で動いている資本の流れが変わってしまう可能性は余波を考えると大きいです。

・キャズムを超えろ「SoftbankがVodafone(J)買収か!? ケータイコンテンツ屋の悲劇はここから始まる...
タイトルにも示されていますが、

結論はタイトルの通り、安っすい投資で美味い汁を吸ってきたケータイコンテンツ屋がとってもツライ思いをするのではないか、と言うもの。
というように、携帯コンテンツ市場が水平構造に移行するのなら、見越して動いていた資金は外に流れることとなります。
(そして、良く考えると、水平を基本志向しているプレイヤーであるYahoo!には悪くない話です)

モバイルコンテンツ市場と単独で括られていたサブセクターが単独のまま残るのか残らないのか、1セグを絡めてモバイル経由で放送と通信の融合の話が進められていますが、この話にも横槍が入ります。

上記を受けて投資資金は当然動く訳で、月曜から忙しくなるのは、記者でも携帯業界でもなく、ファンドマネージャーと投資銀行なんじゃない?というのが二人で一致した意見でした。

この領域は今後どのような分析が出てくるのか最も楽しみなところです。


◆総務省、通信行政への影響

最後に。この話も出るところでは出ています。一日一麺でのあっさり表現をお借りすると、

NTT 再々編の話に再び火をつけることになりかねませんし(固定と携帯の融合とか)、NTT、KDDI との競合が激しくなると 4G の導入スケジュールにも影響が出てきて、総務省的にも困ったことになるのかもしれません。
ここも大変かもしれません。


◆おまけ:メディアとBlogへの影響

そして、このケースの最大の問題は、書き手に対して普段自分が気にかけている領域はどこなのかを暗黙に告白させる踏み絵になっていることですね。「あなたの持っている無意識のフレーム構造はなに?」とポジションを読めてしまう訳です。

もちろん、そう書いている自分自身も(上記に分析全部は書いてないとはいえ)逃れられない訳で。あちこち読み進めていると見落としていたことがたくさん見つかり勉強になります。

◆追記:
CNETに追記記事をまとめました。上で少し触れた、Yahoo!のGoogle化について。

・『ちよろず。』 SoftbankのVodafone買収によるYahoo!JAPANのGoogle化を考える

あんまり長々と書くのもどうかな、と思ってさらっと書いたところをいい具合に補足頂いています。更に追記で補足すると、屋上屋に近くなりますが、コンテンツ/広告へのチャネルを携帯を使って囲い込んでしまうというマーケティング施策ということになります。

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Comments

まとめエントリに収録させていただきました。

Posted by: R30 | 2006.03.05 at 11:46 AM

ありがとうございます。

最後ちらっと追記しました(というかちょこちょこ追記していくと思いますが)。

メディアとBlog書きにとって「あなたの産業理解の仕方はどのようなものですか?」と暗に問いかけるものとなっている辺りも実に小憎らしい限りです。

Posted by: SW | 2006.03.05 at 12:01 PM

はじめまして。リンク&TBありがとうございました。
やっぱり「僕のフレーム」は端末(ハードウェア)なのかなぁ。(笑)これでもケータイ関連ライターの中ではサービス志向派だと思ってきたのですが、こちらのまとめを見てそれだけでなく、他にも新たな認識を得ました。
どうもありがとうございます。

Posted by: みたたかはる | 2006.03.05 at 08:16 PM

三田さん、コメントありがとうございます。mOm

ぐるっと見て平均するとモバイルコンテンツ→ネット→エンタープライズサービス→無線→総務省→資本市場→公取という流れで視野から外れていくみたいです。

メディアポータル、任天堂を再解釈してみる、Googleを追加解釈してみる、B2Bロングテールとでも呼べる法人向けサービスでもSBMの部分への影響はあるのかなど芋づるでまだまだ出てきますが、今後も適時必要な議論はされていくことでしょう。

ファイナンススキームについては、実際に競争力を生むスキームなら投資銀行がなんとしてでも調達してくるでしょうから、落としどころはどこかな、というくらいで気楽に見てます。

あと、小耳に挟んだのですが、本件リリース後ボーダフォングループの株価が9%ほど上がったとか。これだけでも先方には効果大です。

Posted by: SW | 2006.03.05 at 10:20 PM

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