資本主義、貿易、海外アウトソーシング
屋上屋を重ねるようなことはなるべくしたくないので、コンパクトにポイントのみ。
ホワイトカラーの職が海外に奪われるというのはセンセーショナルで、「仕事を失ったインテルエンジニアのAさんの代わりに、インドのBさんが雇われた」という個人のお涙頂戴話は記事になりやすいが、実は海外へのアウトソースには、それほどのインパクトはない、というのが大方の分析結果だ。景気が回復してきているのに雇用が戻らないのは、アウトソースではなく、ITによる生産性の向上が要因、と。90年代にせっせと投資したITの成果が今になってボディーブロー的に出てきたのである。これは貿易経済の基本となるところ、貿易摩擦は例えば日米間でもずっと議論の種になってきたが、実際のGDPなどへのインパクトはそれほどでもないことがある。今回の米国労働市場では、通常の景気回復過程であれば、人によって80万人とか200万人とか書き手によって数は違えど相当な量の雇用が生まれているはずなのに、今回はそうなっていないから、offshoringは悪いというのが典型的な議論になる。雇用が増えないのは①:不況期での企業リストラクチャリング(の余波)、②:同時に達成された生産性向上、③offshoringとなる(細かく見ると地政学リスクの上昇などもあるがどこまでのインパクトだろう?)。が、①と②の合わせ技がでほとんどというのがどうも今回も統計の素直な見方のようだ。
関連したエントリやコラムはそれこそ山ほどあって、政治性の高いトピックなので(国内雇用は大きな政治問題になる)、立場により主張は驚くほど異なっていて訳が分からなくなるくらいの意見パターンがある。
さて、offshoringがいいのか悪いのかというところについては、そもそもの資本主義がマネーの圏内にあるところ資本の効率性を求め続けることを基本ルールとしているので、情報化も手伝って財の流通範囲が広まったとなると、通貨はとっくにグローバル化しているのだから、もはや止めるものはなく、貿易財の範囲が拡大していくこととなる。国を越えて広がった経済圏の中で最適化が図られるのは自然であり、資本の影響範囲と国家の単位がずれているところから問題視されているに過ぎない(という表現方法はあまりにも極論的ではあるが)。
企業も個人も慣れるのは難しいかもしれないが、保護主義に走ったり無理に下支えすると反動はろくなことにならない。
EconomistやBusiness Weekに言われるまでもなく、海外で安くできる仕事は海外に出すに限る。社会主義的・共産主義的保護主義は決して国の経済を強くしない。海外に奪われるような仕事をしている人は、なるべく早くそれに気づいて、せっせと新たなスキルを習得する方が本人のためでもある。「雇用を守る」などとpaternalisticなことを言うトップに10年も引き伸ばされたあげく、「やっぱり海外に移管しちゃいました」といわれるくらいだったら、さっさと新たなスキル習得にかけた方がよい。個人としても、さっさと適応する方が多分(というのは頭で考えるのは楽で体は実際付いてこないことが多いからだが)いい方向なのだろう。
渡辺さんの結論的意見、
社会・経済にはたくさんの要素があって、それがいつも移り変わっているから、いつもどこからか「痛い要素」が出現、全てが調和したハッピーな世の中なんて絶対に実現しない。この意見は達観しすぎているところがあるかもしれないが、自然なエコノミクスの摂理に逆らうとロクなことにならないという思想は同じく持っている。なんでも保護主義を適用すると産業なり国家の競争力を失う。必然の流れに棹差してボロボロになるよりも本質的な流れを掴んで乗れる方が多分幸せだし上手く行く率も高いだろう。
その際に問われるのは、個々人レベルでのリスク管理。雇用も賃金も安定していることを前提として日本は組み上げられてしまっているので、意識してリスク管理しないとどこかで小さく破綻しかねない。ライフプランだとかキャリアアップだとか、流行りモノのごとく語られることがあるが、上ばっかり見上げるのでなく、シビアにリスク側面をしっかりと認識しておくこともきっと大事。
※余談ですが、日本語のBlogを引用してエントリをまとめていると、他人の褌で相撲を取っている気分になってきます。英語でも本質は同じなはずなんですけど、なぜでしょう?















Comments
ちょっと照れくさいですが、ありがとうございます。
私が高校生のとき「die hard共産主義者」の歴史の先生がいたんですが、ソ連崩壊後、いったいどうしているやら、と思っています。
しかし、私も「die hard資本主義者」なので、アメリカが崩壊したらどうしたらいいんでしょうか。引退ですかね。やはり。ははは・・・。
ちなみに、私が留学してたとき、クルーグマンの当時のガールフレンドがスタンフォードのビジネススクールで経済を教えていて、私は彼女のinternational economicsのクラスをとりました。そうしたら、クルーグマンも2回ほど助っ人講師で来ました。15人くらいのえらい少人数のクラスだったんですが。生徒の誰かが「どうしてフィリピンはアジアにありながら、他のアジア諸国と同じレベルの成功ができないのか」と聞いたところ
「フィリピンはラテン。国民気質はむしろメキシコに近いからだ」
と答えて、クラスに4-5人いたメキシコ人たちがイヤーな顔をしていたのを覚えています。
Posted by: chika | 2004.03.28 at 03:39 PM
ちょっと照れくさいですが、ありがとうございます。
私が高校生のとき「die hard共産主義者」の歴史の先生がいたんですが、ソ連崩壊後、いったいどうしているやら、と思っています。
しかし、私も「die hard資本主義者」なので、アメリカが崩壊したらどうしたらいいんでしょうか。引退ですかね。やはり。ははは・・・。
ちなみに、私が留学してたとき、クルーグマンの当時のガールフレンドがスタンフォードのビジネススクールで経済を教えていて、私は彼女のinternational economicsのクラスをとりました。そうしたら、クルーグマンも2回ほど助っ人講師で来ました。15人くらいのえらい少人数のクラスだったんですが。生徒の誰かが「どうしてフィリピンはアジアにありながら、他のアジア諸国と同じレベルの成功ができないのか」と聞いたところ
「フィリピンはラテン。国民気質はむしろメキシコに近いからだ」
と答えて、クラスに4-5人いたメキシコ人たちがイヤーな顔をしていたのを覚えています。
Posted by: chika | 2004.03.28 at 03:39 PM
渡辺さん、コメントありがとうございます。
同姓なのでこうしてやり取りしていると変な感じです(エントリをまとめていても変な感じでした)。
現実的に考えて資本主義に代替する制度はないので、引退の危機は随分先になるのではないでしょうか?
ただ、グローバリゼーションにより平準化が進むと同時にハイブリッド化も変わらず起きているなと感じています。社会主義のちょっと混じった北欧型も一つの方向性ですし、環境主義のような対岸の思想勢力が強まっていることもあります。とはいえ、米国型に若干の修正加わるシナリオはありえるとしても、資本効率の高さはどこまで行っても強力な武器なので、消え去るところはないだろうと見ています。ドル資産も変なクラッシュがない限りは持ち続けます。頑張れ、米国資本主義。
それにしても教授、「デリカシー」という言葉がよぎってしまうくらい辛口(苦笑)
政権や他学派へのコメントもけちょんけちょんなのでいつもの風景といえば風景ですが、あんた、スクールのクラスなんやからもうちょっとばかり考えようや。。。
Posted by: SW | 2004.03.28 at 04:44 PM